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【自然栽培】家庭菜園で無農薬・無肥料を実現するための土作り

カテゴリー:家庭菜園全般 投稿日時:11月11日 

無農薬・無肥料で野菜を育てる『自然栽培』という究極の方法があります。
これはNHKのプロフェッショナルでも取り上げられた、「奇跡のりんご」で有名な木村秋則さんの考えです。
この自然の摂理に沿った考え方は大変素晴らしく、自然とは健康とは何かまで考えさせられる栽培方法です。

しかし一家庭菜園者が自然栽培を理解し小規模栽培に落とし込むことは、金銭が絡んでいない以上メリットは決して大きくはなく、またその仕組みを理解すること自体かなり難しくもあります。
ただし、とにかく安全な野菜を美味しく食べるためには、試してみても損は無いと思います。
また今後、家庭菜園を続ける上で自然栽培の知識を知っているかどうかでも、今後の野菜作りの参考になるかもしれません。

木村秋則の作る野菜は腐らない!?

自然栽培の土作り
木村さんが無農薬・無肥料で作る野菜や果物は腐ることなく、「枯れる」か「発酵」するので腐敗せず虫が寄ってこないそう。
驚きの事実です。
確かに森は肥料を与えているわけではないのに、木の実や果実が自然に実のり、それが朽ちても腐敗臭はしていません。
また農薬を使っていないのに、病気も蔓延していません。

木村さんはこういった森の自然にヒントを得て、森の自然サイクルを参考に自然栽培を確立したと言います。
それまでのりんご栽培では果樹の周辺に生える雑草を丁寧に抜いていたそうですが、試行錯誤のうえ、雑草にもそれぞれ役割があること、また植物が病気になったとしても植物自体に治癒能力が備わっているということに気づいたらしいです。

ただ、もし私が農家なら、これまでの知識や経験値によって木村さんの考えを理解することはできても、実践することには大きな戸惑いを覚えると思います。
これまで一定のやり方で生活をしてきた人に、今までのスタイルを捨て「無農薬・無肥料で栽培してみろ」というのは、かなりの勇気がいることですよね。
しかも生活がかかっている訳ですから。
でも、もしもこれが本当であれば、日本の農家さんが行う野菜栽培の手間は大幅に削減され、大きく栽培コストを落とし「儲かる農業」にすることも可能となります。


木村さんの考えを理解する

まず木村さんが言うには、『無肥料』で栽培をすると、そもそも害虫がつかないとのこと。
害虫が寄ってくるのは肥料を使うからで、肥料を使えば農薬が必要になるという悪循環になっている、ということを指摘しています。

では、どうやって肥料を使わずに作物を育てるのか?という疑問が浮かびます。
ここから科学的な話になり難しくなるところですが、ここを理解しないことには先には進めませんので、頑張って噛み砕いて説明してみます。

まず木村さんが悪いとしているのは「硝酸態窒素」
植物における窒素とは、発芽後、葉や茎を形成するために必要な栄養素で、植物が自分で光合成できるようになるまでに必ず必要となります。
しかし、植物は窒素をそのまま吸収することができません。

窒素が植物の吸収できる形になるまでの流れを抑えておきましょう。

微生物や土中の成分と結合したりして
アンモニア窒素 → 硝酸態窒素 → 硝酸塩 → 硝酸イオン
という流れで窒素は変化していきます。

硝酸塩が水に溶けた状態を硝酸イオンと言いますが、この硝酸イオンと水を一緒に吸収することで、植物はやっと窒素を獲得することができます。
そして得た窒素をもとに茎や葉を作り、成長した後は、光合成などによってアミノ酸やたんぱく質などを生成し、生命活動の源とするのです。
ここまでが窒素の変化の話。

そして、この窒素が大気中に沢山含まれていることは、皆さん小学校で習ったはずです。
それをわざわざ人の手で植物に与えていくと、どうなるでしょうか?

意外なことに、植物は自分で窒素の摂取量を制御することができません
土中にある硝酸イオン(窒素)を、あればあるだけ吸収すると言われています。

そこへ肥料を投入すると、有り余る硝酸イオンを全て消化しようと、自分の体を大きくしてまで消化しようとします。
人間で言えば、食べ過ぎで胃袋が大きくなった、肥満という状態です。
つまり肥料を与えて植物が大きくなるのは、この原理が働いているからです。
なので肥料を与えれば与えるほど葉や茎が大きくなるのですが、そうすると今度は、光合成によってアミノ酸とたんぱく質を大量に生産することになります。
するとアブラムシなどをはじめとする害虫は、このアミノ酸やたんぱく質を求めて呼び寄せられ葉を食害する、という結果にたどり着くのです。
また肥満になった植物は軟弱であり、実も茎も葉もすぐに腐ってしまいます。

このような考えから、人為的な窒素の供給を止めることで健全な野菜づくりが可能となり、害虫も寄せ付けなくなる。
つまり「無農薬栽培に近づくことになる」という考え方となります。

しかし、これを聞くと新たな疑問が浮かぶと思います。
植物の成長に必要な窒素を、無肥料でどうやって土に補給するのかということ。
特に、直前に作物を栽培していれば畑に硝酸イオンはほとんど残っていないはずです。
肥料なしでどうするのでしょうか?

この問には、空気中にある「窒素を土中に固定させる」ことで解決を図るそうです。

空気中の窒素を土に取り込むことができるのは、バクテリアなど限られたいくつかの細菌だけ。
この限られた細菌の中で、植物と共生して生きる細菌がいます。
それは「根粒菌」という細菌。
マメ科の植物の根で暮らす、共生細菌です。
エンドウの種まき
エンドウ豆の種まき。

この根粒菌をもつマメ科の植物を、育てたい作物と一緒に育てることで、窒素分を土に補給する役割を果たしてくれます。
これで窒素を肥料に頼らずに獲得することが可能となるようです。
マメ科の根粒
白い塊がマメ科の根粒。

ただ木村さん関連の情報には、その他のリン・カリ、そしてカルシウムとマグネシウムをどのように捕球するのかの記述がありませんから、このあたりは自分で研究しなくてはなりません。
おそらくですが、完熟堆肥と苦土石灰は自然栽培においても使用し、未熟な堆肥や腐葉土は使用しないのではないかと推測しています。

自然栽培への土作り

土作りについては、人が介入する必要はなく、硬い地盤でも深く根を張ることのできる「麦」を育てることで、勝手に土が耕されるという考え方のようです。
これは、森に生える雑草の役割を麦に置き替えたもので、森では雑草が根を伸ばすことで土が固まることなく、土中に酸素が供給される仕組みになっているとのこと。

さらにかなりの肥料食いである麦が余計な肥料分を吸収
これで土はリセットされ、余分な窒素もなくなり自然栽培の準備が整います。

木村さんいわく、植物全般において多少土が固くても根が伸びないということは無いらしく、むしろ根の成長を阻害しているのは「水」だと言います。
水が多いと土が締まってしまい、根が進めなくなるばかりか、酸素も不足してしまうということ。
水を好む植物に関しては、植え付け時に苗を中心とした溝を作ってあげることで、水が溜まるようにしてあげれば良いという考えだそうです。

成長過程での肥料については、最初から肥料を与えた植物はその後も肥料が必要になるが、肥料を与えずに育った場合は、その後も肥料を必要としないという木村さんの教え。
つまり、ホームセンターなどで手に入る培養土なども、自然栽培では使ってもいけないということになります。

ということで、自然栽培を行うためには土のリセットから始める必要があります。
手順としては、夏の栽培が終わった家庭菜園の畑を、ざっくりと耕してゴミや石などを取り除きます。
その後、来年の夏に無農薬・無肥料栽培を行うため、小麦を植えて肥料分を吸い取ってもらいます。

こちらが麦の種。

市販されていないので、ネットを使いキロ単位で買う必要があります。
麦の種
そしてこちらが麦の発芽。
麦の発芽
当然ですが、家庭菜園レベルで小麦を収穫しても茶碗一杯のうどんも作れませんので、収穫まで待つ必要はありません。

そして翌年の春、夏野菜の苗と窒素補給のためにマメ科植物を一緒に植え付けます。
自然栽培をすると病害虫には強くなるものの、成長の初動は遅くなるようです。
しかし自然栽培を成功させれば、収穫のころには肥料ありと遜色ない大きさにまで成長するということです。

いかがでしたでしょうか?
自然栽培の理屈と自然栽培の始め方。
もちろん家庭菜園で自然栽培を行おうと考えたら、普通に育てるよりも難易度が高くなります。
しかし、本当の自然環境で作られた野菜を収穫できるというのも、大きな魅了であることは間違いないですね。
興味のある方はぜひ実践してみていただけたらと思います。

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